川崎病は生後3ヶ月くらいの赤ちゃんから4歳位のこどもに発症し、高熱を出す原因不明の病気です。過去何回かの全国的な大流行がありましたが、最近では毎年約8000人が川崎病に罹患しています。
主な症状としては次のようなものがあります。
このうち5つ以上を認めた場合、川崎病を強く疑います。初めは咳と熱など「かぜ」によく似た症状が多く、全部の症状がそろうのに3〜4日かかります。似たような症状を示す他の病気もあり、診断がつきにくい場合もあります。
症状が4つ以下でも後で述べる心臓超音波検査で冠動脈の変化を認めた場合、川崎病と診断されます。年長児では発熱よりも首のリンパ節が先に腫れ、化膿性リンパ節炎やおたふくかぜと診断されることもあります。
約30年にわたって、多くの研究者や小児科医たちが川崎病の原因を突き止めようとがんばってきました。
この間、細菌やウイルス、ダニなどの感染症説やアレルギー説など様々な説が出ましたが、いまだにその原因は判っていません。
発見当初、川崎病は予後良好の病気と考えられていました。
しかし、昭和45年に行われた厚生省(当時)による第1回全国調査にて10例の死亡報告があり、このうち4例の死因は冠動脈瘤に伴う急性心筋梗塞でした。
その後の研究により、川崎病の心臓合併症が広く知られる様になりました。
川崎病の心臓合併症のうち、もっとも注意しなければいけないものが冠動脈合併症です。川崎病は全身の血管に炎症が起こり、その結果高熱などの症状が出現する「血管炎」と考えられています。特に心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送る血管(冠動脈と言います)に炎症が起こり、その影響が残ると問題となる場合があります。
通常、発熱などの症状がみられてから1週間を過ぎると冠動脈に変化が見えます。多くの場合、冠動脈の軽度の拡張などだけで、約1ヶ月程度で正常化します。
しかし、時に冠動脈が拡張したままだったり、巨大な瘤として残ってしまうことがあります(約3〜10%)。しかしこれらも時間とともに正常化し、最終的に冠動脈瘤として残るものは全体の約1%程度と言われています。また時間の経過と共に、これらが更に変化して硬くなったり(石灰化)、狭くなったり(狭窄)することもあります。これが冠動脈合併症(後遺症)と言われるものです。
このような冠動脈の変化が起こると、血管の中で血液の固まり(血栓)が出来やすい状態となり、最終的に血管が詰まり心筋梗塞などを引き起こすこともあります。急性期の心臓障害として最も注意しなければならないのがこの急性心筋梗塞です。
成人同様、小児においても胸痛などの典型的な心筋梗塞症状が見られます。しかし、乳幼児の中には、不機嫌や軽度の胸部不快感、腹痛などが数時間から半日程度みられるのみで、症状が判り難いこともあります。
このように、冠動脈瘤などの合併症を持った場合、その後も定期的な検査や薬の継続が必要となり、時に運動や生活の制限が必要となることもあります。
冠動脈瘤の発症予防にはガンマグロブリン大量療法とアスピリンの併用が最も一般的な治療です。
ガンマグロブリンは、体の中で炎症を抑えたり感染を予防したりする成分で、これを献血によって得られた血液から分離・精製・処理したものが治療薬となります。
アスピリンは鎮痛解熱薬として古くから有名な薬で、炎症を抑えたり、血栓予防にも効果があります。これらを病初期 (発熱後1週間以内)に使うことでほとんどのこどもは速やかに解熱し、血液検査も改善します。
しかし治療を行ったにもかかわらず、約10%の子供達に治療後も続く高熱や解熱後の再発熱がみられます。これら治療への不応例では血管炎が持続している事が予想され、冠動脈拡張・瘤に進行する確率が高くなります。
小さな冠動脈瘤が残った場合、血栓予防としてアスピリン内服が続けられます。また、巨大冠動脈瘤の場合は血栓形成の可能性が高く、強力な治療や運動制限が必要となることもあります。
急性心筋梗塞は川崎病発症から2年以内に多くみられます。心筋梗塞発症時には、血栓融解療法 (経静脈投与や冠動脈内投与)が行われ、また心筋梗塞後の心機能低下等に対して各種薬剤が用いられます。
現在では心臓超音波検査(心エコー)の精度が進歩し、急性期における冠動脈の変化やその他の心臓合併症の診断に威力を発揮しています。小児循環器の専門医が行う心エコー検査により、正確な診断が可能です。
しかし、心エコーも万能ではなく、冠動脈遠位や狭窄病変の描出は苦手で、心電図や核医学検査などの検査も併用し総合的に判断します。
巨大冠動脈瘤の残存や狭窄病変を持つ場合、これらに加えて定期的な冠動脈造影検査も必要となります。
巨大冠動脈瘤は長期的には狭窄・閉塞病変など急性心筋梗塞の原因となる状態へ進行しがちです。このため、高度狭窄・多枝狭窄ではバイパス手術等の適応となることもあり、良好な成績を残しています。
近年ではこれら外科的手術だけでなく、カテーテルインターベンションと言われる治療も試みられています。